「わたしのマイルストーン」第1回 蒼井まもる×いくえみ綾 スペシャル対談④

マイルストーン:鉄道や道路における起点から中間地点の距離を表すための標石。
本連載は、ゲストの方々にクリエイター人生の中でのマイルストーンを、時期・場所・出会った人の3軸から掘り下げていただくインタビュー企画です。

第1回の今回は特別編として、「OUR FEEL」にて新連載『ふつうの女の子』がスタートする蒼井まもる先生と、蒼井先生が敬愛するいくえみ綾先生のスペシャル対談が実現!

全4回にわけて、お二人の「マイルストーン」をお聞きしていきます。

第1回:「わたしのマイルストーン」第1回 蒼井まもる×いくえみ綾 スペシャル対談① - OUR FEELブログ | OUR FEEL(アワフィール)

第2回:「わたしのマイルストーン」第1回 蒼井まもる×いくえみ綾 スペシャル対談② - OUR FEELブログ | OUR FEEL(アワフィール)

第3回:「わたしのマイルストーン」第1回 蒼井まもる×いくえみ綾 スペシャル対談③ - OUR FEELブログ | OUR FEEL(アワフィール)

なんでもない顔をして、みんな結構すごい人生を生きている

-最後のマイルストーンは〈出会い〉です。人生の転機となった出会いを教えていただけますか? 

蒼井 これはもう、娘ですね。子どもが成長していくのをそばで見ていると「私もこうやって生まれて育ったんだ」と目の当たりにするんですね。生まれ直しのような経験でもあって、世界の見え方ががらりと変わりました。娘を産んだのは私なんですけど、自分も生まれたみたいな。だから今は結構ピチピチの気持ちで、人生まだ6年目くらい(笑)。すごく新鮮な気持ちです。

-「OUR FEEL」での蒼井さんの新連載『ふつうの女の子』にも、その感覚は反映されていますか?

蒼井 はい。今お話ししたことそのままの物語っていう感じです!

いくえみ ネームを読ませていただいたのですが、この作品でも生まれたばかりの主人公・アンちゃんの周りにいろんな人たちが出てきているので、これからきっと色んなドラマがあるんだろうなと楽しみにしています。第1話のはじまりが宇宙目線っていうのが、おもしろいですよね。

蒼井 人生を描こうとしているので展開がゆっくりなんですが、あれを回収できるまで少し待っていていただけたら!(笑) 

-連載は始まったばかりですが、今後の見どころを少し教えてください!

蒼井 みんな何でもない顔をして生きてますけど、実は結構すごい人生を歩んでいますよね。そこを描きたいです。エッセイにするか迷ったんですが、フィクションなら描きたい放題だし、演出もし放題。繊細にも、キュンキュンした展開にもできるし、自由度が高いですよね。読者の皆さんの心の中に、アンちゃんという友達がひとり増えたくらいの読み味で描けるといいなと思っています。

いくえみ 絵柄はちょっと変えたんですか?

蒼井 実は『あの子の子ども』の方が見せ方を変えたくて、ペンを変えたりしていたんです。だからこちらがもともとの絵柄というか。

いくえみ すごく納得しました。『あの子の子ども』では、かわいらしい絵柄なんだけど独特のリアルさもあって、そのギャップが気になってたんです。蒼井さんの絵はキャラクターの手の動きとか体勢とかも全然パターン化してなくて、素敵ですよね。

蒼井 ありがとうございます。下手なりにいちいちポーズをとって写真を撮って描いたのが報われます……!

いくえみ 私も同じです。スマホで自撮りしていなかった時代にどう描いていたのか、もはやわからない(笑)。

蒼井 先生もですか? 私は赤ちゃんの人形も買って、ポーズだけでいいのになぜか顔もいちいち演技しちゃっているので、カメラロールがひどいです(笑)。消さなきゃ!

ずっとマンガを描き続けることが私たちのマイルストーン

いくえみ 私にとって特別な出会いは、やっぱり猫ですね。父が転勤族だったので「絶対に動物を拾ったらだめだよ」って言われてきて。子供の頃はそこらへんの猫を呼んで、家にあげようと必死でした。「もう牛でも豚でもいいから飼いたい」と言っていたと今でも母親が言うんですけど(笑)。高校生の時に友達の家で猫が生まれて親に聞かずに連れてかえり、そこからはずっと猫と暮らしています。マンガにも出しすぎじゃないかっていうぐらい出して。

-「FEEL YOUNG」で連載されていた猫エッセイ『そろえてちょうだい?』[1]最後のみちくさ編では、愛猫・ブンたんの闘病が描かれていましたね。読むと泣いてしまうのですが、みんなこうやって送っているんだよなと勇気をもらいました。

いくえみ あれはね……ちゃんと全部描くつもりだったんですけど、途中であまりにもつらくなってやめてしまいました。でも先に猫を送るのはね、当たり前のことなので。こっちが先に死んでしまう方がだめだから。今は大ちゃんという猫がいるんですけど、まだ2歳なんで、私もあと15年はがんばらないと。

-「OUR FEEL」ではその大ちゃん(大福)も登場するエッセイマンガ『猫のいるウチ便り』を連載中です。

いくえみ このエッセイでは、猫だけじゃなくて、札幌での暮らしのこまごましたことを混ぜて描こうかと考えています。大ちゃんはもともと外猫だったんですけど、家猫になって落ち着いたら、前にいた猫たちのことも少しずつ触れていきたいですね。

-楽しみにしています。では最後の質問です。お二人の次なるマイルストーン、目標地点はどこになりますか。

蒼井 出産も離婚も、結局、後から「あれが転機だった」とわかったんですね。私にとってのマイルストーンって、前もって自分で決められるものじゃないんだろうなと感じています。きつい体験ではありましたけど、その後の変化を知っているから、私はまた来て欲しいです。転機があれば、また新しいマンガが描けるし!(笑) いつでもウェルカムです。

いくえみ すごく個人的な話なんですけど、私は去年還暦だったんですよ。

蒼井 おめでとうございます!

いくえみ ありがとうございます。それで久しぶりに、なんだかすごく新しい気持ちになったんですね。今日の蒼井さんとの対談もそうですけど、今活躍している新しい作家さんと初めてお会いしたりするのもうれしくて。私は出不精で引っ込み思案なところがあるんですけど、還暦を機に、もうちょっと外に出ようと考えています。あとは本当に、変わらずにずっとマンガを描いていけたらいいかな。

<全4回>

>>第1回から読むourfeel.jp

取材日:2024年12月20日
インタビュー・構成:横井周子

[1] 『そろえてちょうだい?』『そろえてちょうだい?みちくさ編』スコティッシュフォールドのブンたんら、飼い猫たちとの日常を描く4コマエッセイマンガ。

🪐蒼井まもる 新連載🪐
『ふつうの女の子』はこちらから!
ourfeel.jp

 

蒼井まもる

『別冊フレンド』(講談社)にてデビュー。主な著作は『あの子の子ども』『恋のはじまり』『さくらと先生』(以上すべて講談社)ほか。『あの子の子ども』は第47回講談社漫画賞・少女部門を受賞、2024年のアイズナー賞 ティーン向けベスト出版の最終ノミネート作品となった。
「OUR FEEL」にて『ふつうの女の子』連載中。

いくえみ綾

北海道生まれ。
1979年『別冊マーガレット』(集英社)でデビュー後、時代にマッチした名作を多数発表し、幅広い読者層を魅了し続けている。『バラ色の明日』で第45回小学館漫画賞を受賞、『潔く柔く』が第33回講談社漫画賞少女部門を受賞した。大の愛猫家。
「OUR FEEL」にて『猫のいるウチ便り』連載中。