
名古屋を拠点に、育児の傍ら漫画を描き続けるお二人。実は“ご近所”という不思議なめぐり合わせが生んだ、リアルで温かな創作トークを全4回にわたってお届けします。
―12月16日に1&2巻が発売される蒼井まもる先生の最新作『ふつうの女の子』の魅力についてお伺いしていきたいと思います。ねむ先生は本作を読まれていかがでしたか?
ねむ すごく“読者に厳しい作り方”をしているなと思いました。今回、モノローグをあまり描いてないですよね? だから、読者が自分から物語を取りにいかないといけない構造になっているなと。
蒼井 そうですね。特に初期の方は、主人公・アンの年齢的にまだ自分の思考をうまく言語化できない状態なので、あえて入れていないんです。
ねむ なるほど、そういうことなんですね。それを最初からやっちゃうのめっちゃ強気じゃん! でも好き! って思いました(笑)。というか、蒼井さんは「ちゃんと読んでくれる」って読者を信頼しているんですよね。そういう作り方ができるのは本当にすごいと思います。それに、『あの子の子ども』の頃から絵柄も変えていますよね。
蒼井 そうですね。少しコミカルというか、あっさりさせたかったんです。ソフトで言うと、ペンのブラシを変えたとか、そのくらいの違いなんですけど。あと、トーンワークも少し落ち着かせました。『あの子の子ども』のときは映画っぽさをすごく意識していたので、その雰囲気がなくなったのは大きな変化かもしれません。
ねむ モブや老若男女の描き分け、デフォルメのバランス、おしゃれな線や背景のデザイン……どれもより洗練されている。前の絵も本当に好きだったけど、今回はますます好き! しかも、テーマ自体がすごく難しいのに、よくここまで引っ張ってこれたなと思います。

『ふつうの女の子』©︎蒼井まもる/シュークリーム 5話より
―本作はどういったところから着想を得たのですか?
蒼井 実は、前作『あの子の子ども』を描いていた時に、すごくもどかしい思いをしたんです。これは少し傲慢な言い方かもしれませんが、「伝えたいように伝えられない」もどかしさがあったというか。やっぱり色々な捉え方をされる作品だったので……もちろん、それは読者の自由だし、そういう作品にも意義はあるとも思っているんですが。それでも、やっぱり自分の中でモヤモヤが大きく残ったんですよね。
―センシティブなテーマかつ、現実的な問題を真正面から描いた作品だからこその苦悩ですね。
蒼井 反応がすごくダイレクトな作品だったので、いろんな価値観の意見を一度に浴びて、自分の気持ちが揺らいでしまったこともありました。だから次は、「自分の思うように描こう」と。読者の反応を気にしすぎず、自分が面白いと思うものを届けようと思って始めたのが『ふつうの女の子』です。
それともう一つ大きなきっかけになったのは、子どもを育てる中で、自分のこれまでの人生をたびたび思い出すようになったことです。子どもの成長を見ていると、ふと「自分もあの頃、こう感じていたな」と心が過去に戻る瞬間があって。30代半ばになった今、小さな頃の感情が少しずつ回収されていくような感覚があるんです。そのたびに、生きていること自体が物語なんだと実感するようになりました。今だって、ねむさんの作品を初めて読んだ頃から、まさかこうして一緒にお話しする日が来るなんて! あれは伏線だったんだ! みたいな(笑)。そういう“人生の伏線回収”に気づいたことが、本作を描く大きなきっかけになりました。
―初めて読んだとき、まるで家族のホームビデオを見ているようだと思いました。
蒼井 正直、この作品では、特に劇的な出来事は起きません。でも、アンにとっては、本当に“何かが起きた”ということの連続なんですよね。それを一つひとつ丁寧に拾って物語にしていく部分と、すでに“物語になった部分”との両立というか。そこがすごく面白いなと思っていて。そうした積み重ねの中に、きっと多くの人が共感できる部分があるんじゃないかなと。この作品は私自身にとっても、これまでにない形での挑戦になっていると感じながら描いています。
―ねむ先生は、本作を読まれて母親という立場から共鳴した部分や、印象に残ったシーンはありましたか?
ねむ 私、本当はアンちゃんのお母さん・仁美さんみたいになりたかったんだよなと、思い出しました。母親になっても、自分のことを一番に考えて生きていく。そうやって生きていれば、それがちゃんと子どもにも伝わって自然とメッセージになる。つまり、「母親になっても、私は“私”を優先して生きていける」と思っていたけれど、実際はなかなかそうはいかなくて……。だからこそ、仁美さんみたいにそれをはっきり言い切ってくれるのは、すごく素敵だなと思うんです。一方で、おばあちゃん(仁美さんの母親)の存在も印象的でした。彼女は、仁美さんとは本当に真逆なタイプで躾のために、嫌がるアンを無理やり座らせて教えるような人。でも、その厳しさがあったからこそ、最終的にアンもちゃんとできるようになるんですよね。
蒼井 そうなんですよ! そう考えると、どっちが良い悪いなんてないんですよね。あの厳しい母親に育てられたからこそ、仁美さんは逆に奔放な母親になったとも思いますし。そして、仁美さんのような母親と、またタイプの違うおばあちゃんに育てられたアンちゃんが、これからどうなっていくのかそれはまだ誰にもわからない。物語って“作っているようで、作られている”というか……自分でも手探りで描いている感覚があります。
ねむ 本当にそうですよね。私たちだって、自分の子どもたちがこの先どうなるかなんてわからないですもんね。でも今の時点では、アンちゃんがすごく良い子で、可愛らしく育っていて。だからこそ、これからどんなふうに成長していくのかすごく気になります!
取材日:2025年9月17日
インタビュー・構成:ちゃんめい
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2004年『FEEL YOUNG』に掲載された『ナイトフルーツ』にてデビュー。初連載作『午前3時の無法地帯』がヒットし、2013年に実写ドラマ化。2023年には『こっち向いてよ向井くん』がTVドラマ化。ほか代表作に『トラップホール』、『とりあえず地球が滅びる前に』、『神客万来!』など多数。
「OUR FEEL」にて『たぶんここから始める恋』連載中。
https://x.com/nemuyoko
『別冊フレンド』(講談社)にてデビュー。主な著作は『あの子の子ども』『恋のはじまり』『さくらと先生』(以上すべて講談社)ほか。『あの子の子ども』は第47回講談社漫画賞・少女部門を受賞、2024年のアイズナー賞 ティーン向けベスト出版の最終ノミネート作品となった。
「OUR FEEL」にて『ふつうの女の子』連載中。
