OUR FAVORITE THINGS vol.2

作家さんやゲストの方々、編集部員がわたしの「すきなもの」について語るリレー連載。
多くの人々がなにかに熱中することが、身近な光景になったこの頃。
「すきなもの」も、それに対する気持ちも十人十色。
それを語り、共有することでわたしたちの気持ちが見えてくるかも?

バナーデザイン:惣田紗希

第2回の更新となる今回も編集部員Nによる【映画】紹介回です📽️🎶

わたしの映画に対する気持ちは第1回に書いておりますので、
もしまだ読まれていない方がいましたら、そちらもお読みいただけましたらうれしいです!

今回は大好きな作品と、もうすぐ劇場公開予定の気になる作品をご紹介します·₊★

『セイント・フランシス』

© 2019 SAINT FRANCES LLC ALL RIGHTS RESERVED
〚𝐒𝐓𝐎𝐑𝐘〛
うだつがあがらない日々に憂鬱感を抱えながら、レストランの給仕として働くブリジット、34歳、独身。親友は結婚をして今では子どもの話に夢中。それに対して大学も1年で中退し、レストランの給仕として働くブリジットは夏のナニー(子守り)の短期仕事を得るのに必死だ。自分では一生懸命生きているつもりだが、ことあるごとに周囲からは歳相応の生活ができていない自分に向けられる同情的な視線が刺さる。そんなうだつのあがらない日々を過ごすブリジットの人生に、ナニー先の6歳の少女フランシスや彼女の両親であるレズビアンカップルとの出会いにより、少しずつ変化の光が差してくる――。
足りないものばかりに目を向けて落ち込むのはもう終わり
不安だらけの人生を過ごす人たちに贈る優しいエール

20代後半くらいから周りからなんとなく求められるキャリア、結婚、出産…
たとえ自分がそれらを望んでいなかったとしても、
そういう“正解”の人生を歩んでいないことで出来損ないのような感覚になる。
そのような気持ちは多くの人が感じたことがあるのではないでしょうか。

まさにそんな気持ちに押しつぶされそうになっていたブリジットは、
ある夏、ナニーとして6歳の少女フランシスと過ごすことになります。
すこし大人びて生意気さもあるフランシスに手を焼き、時には失敗もしながらも、
慣れない子守りに奮闘するブリジット。そして、自身の中絶を経験したことで、
子どもや“生まれること”について改めて考えはじめます。

劇的な変化が起こるわけではないれけど、フランシスや彼女の両親たちと過ごすうちに
ブリジットの中で何かが確実に変わってゆきます。
誰かと比較して落ち込んでしまった時、
そういう気持ちをどうやって消化したんだろう?と振り返ってみると、
案外友達とのおしゃべりや日々の何気ない出来事で薄れていった気がします。
この物語にはそんな何気ないささやかな祝福が詰められているように思います。

生理、避妊、妊娠、中絶、産後うつなど、
これまで語ることを避けられてきた女性の身体のこと、
さらにレズビアン夫婦、黒人女性が直面する差別をもリアルに描かれ、
女性の生きづらさを描くことを妥協しない心強さも感じられます。
漠然とした不安を抱えてしまう時、すこし落ち込んでしまった時に
あたたかい飲み物と共に観ていただきたい作品です。

Watch this Movie

DVD好評発売中(販売元:ポニーキャニオン)
Amazon Prime Video、U-NEXT他にて配信中
詳細は公式サイトをご確認ください。

www.hark3.com

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『テイク・ミー・サムウェア・ナイス』

© 2019(PUPKIN)
〚𝐒𝐓𝐎𝐑𝐘〛
アルマはオランダ生まれのボスニア人。両親は戦火に揺れた祖国を離れ、オランダで彼女を育ててきた。やがて父はひとり祖国へ戻り、消息は遠ざかっていた。そんな父が入院したという知らせが届き、母に言われるまま、アルマはたったひとりでボスニアへと向かうのだった。出迎えたのは、終始ぶっきらぼうで何の手助けもしてくれない従兄のエミル。部屋に置き去りにされ、キャリーケースは壊れ、荷物も取り出せず、居場所のない空間に身を持て余す。
そんな時、アパートの扉の前で眠り込んでいた彼女に声をかけたのは、エミルの“インターン”を名乗るデニスだった。彼だけが、彼女の話に耳を傾けてくれるのだが...。ようやく父のいる町を目指し、小さなキャリーケースを引いてバスに乗り込むが、休憩の間にバスは彼女を置き去りにし、荷物だけを乗せたまま走り去ってしまうのだった——。
“わたしの場所”はどこにある?
少女でも大人でもないアルマの自分探しの旅

生まれ育った場所と自身のルーツ、ふたつの母国を持つアルマは、
「自分はどこに属しているのか」「本当の居場所はどこなのか」を問い続けて旅に出る。
これはボスニア・ヘルツェゴビナ出身、オランダ育ちという
監督自身の半自伝的映画でもあるのだそう。

ふたつの母国、少女と大人、奔放な行動と繊細な感情、憧れと現実…
様々なものの間で揺れるアルマの旅は予測不能なことばかりでハラハラするけれど、
最低限の言葉と音楽、美しい色彩と画面設計で淡々と描かれることによって、
夢を見ているかのような感覚になり、それが不思議と心地良くなってきます。

この世界のどこかに素敵な場所があるはず、と旅をするアルマですが、
一方で、バスに置いていかれたアルマを助けた女性の言葉が
そんなアルマと対照的なものに感じて印象的でした。

「どこも同じよ 同じ社会 同じ男たち
 男が気にするのは 他の男たちからの評価だけ」

“大人になる”とはどういうことか、未だにはっきりとは分からないけれど、
そこにはある種諦めのようなものがあるのかもしれません。

ヨーロッパを舞台に自身のルーツを探る物語ではありますが、
わたしたちにとって普遍的な、いつか失ってしまった(かもしれない)
あの頃の気持ちを感じることが出来るような作品です。

Watch this Movie
9月13日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

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あなたの心に響く作品はありましたでしょうか?
劇場公開予定の作品はぜひ映画館に足を運んで観てみてください ໒꒱˚.*

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