OUR FAVORITE THINGS vol.12 ゲスト:nakami先生×芥文絵先生 Part.4

作家さんやゲストの方々、編集部員がわたしの「すきなもの」について語るリレー連載。
多くの人々がなにかに熱中することが、身近な光景になったこの頃。
「すきなもの」も、それに対する気持ちも十人十色。
それを語り、共有することでわたしたちの気持ちが見えてくるかも?

バナーデザイン:惣田紗希

OUR FEELで『ロンロン、沼を知る』を連載中のnakami先生と、FEEL YOUNGで『転がる女と恋の沼』を連載中の芥文絵先生。
「主人公がアイドルオタク」という以外にもおふたりには共通点が。それは…「【すきなもの】ーー推しが同じ」ということ。 
そこに編集部員(同じグループの別のメンバー推し)も加わり、『ロンロン』の聖地であるロイホでまったり「推し活」や「アイドル」について語りました!
最終回は、推し活を通して考える「恋愛」と「仕事」についてです。

Part.1 〜3はこちら
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「そこに自分が登場しなくてもいい」――いまどきの“好き”のかたち

編集:やっぱり推しって、元々「好きなタイプ」だったりしますか? 傾向みたいなのありますか?
芥文絵:アイドルにハマって、初めて「好きな男性のタイプ」を認識した気がしますね。
nakami:どんなタイプなんですか?
芥:ダンスがしなやかで性格も柔らかめな、線の細い人が好きみたいです。男性的なアイドルもイケメンだとは思うんだけど、そんなに刺さらないというか。今の推しを好きになってから他のグループのアイドルに目を向けても、そういうタイプに惹かれますね!
編集:nakamiさんはいかがですか? これまでの推しに「共通項」ってあります?
nakaki:「やるときはやる人」? 自分を追い込むストイックさがあるというか、軸がぶれてない感じですかね。すごく憧れるんですよ。自分がそうなれてないから尊敬しちゃいます。だけどプライベートでは可愛かったり不憫だったりするギャップも好きなんですよね(笑)。
芥:わかります! ストイックな推しを見て「私も仕事頑張ろ!」って思います。
nakami:そういえば、私『転がる女と恋の沼』を「タイプでいうと、どのキャラが一番好きなんだろう?」って思いながら読んだ時、紺くんが好きだなって。丈さんもすごくかっこいいのに、なんで紺くんなんだろうって考えてて…やっぱり紺くんてかわいいじゃないですか。


『転がる女と恋の沼』©芥文絵/祥伝社 FEEL COMICS

編集:かわいいですよ! 紺はかわいいです。
芥:私自身は丈の方が好きで(笑)。私はかわいさをあんまり求めてないのかな? 外見がかわいいのはいいけど。
nakami:丈さんは安定感があってかっこよくて、ちょっと完璧すぎるといいますか。どう付き合ったらいいかわからなくて(笑)。
編集:ああ〜、そつがない感じですもんね。
nakami:大人で頼りがいがあるから、友だちには超ほしいんですよ! あんな人が幼馴染だったら最高じゃないですか。


『転がる女と恋の沼』©芥文絵/祥伝社 FEEL COMICS

編集:私は丈には「お父さん」になってほしいですね。
芥:えーーー! 夫は!? 夫は!?
nakami編集夫ぉ〜〜〜〜〜!?
芥:ふたりでハモっちゃった(笑)。
編集:私は付き合うのも結婚するのも紺がいいです!
芥:え〜!? 口下手だし結構イラつくと思いますよ〜? 紺が夫になったら。生活を共にすると思ったら。私は丈みたいに気持ちが安定してる人が好きなんですよね。いつもメンタルがブレず機嫌がいいみたいな。
nakami:たしかに不機嫌な人と一緒にいるのは嫌ですよね。
編集:それでいうと、推しと実際に恋愛したり結婚したいって思ったりしますか? 
芥:リアコかどうかってことですか?
nakami:芥さんってリアコではないんでしたっけ?
芥:たぶん違うと思います。推しに熱愛報道が出た時、「嬉しい」が勝っちゃう。
編集:「嬉しい」って何…? 意味が分からないんですけど…。
芥:推しがいったいどういう人がタイプで、どういう恋愛をするのかがイメージできるのって良くないですか? 「あっ、こういう感じが好きなんだ〜」とか「付き合ったらこんな感じなのかな」とか妄想が捗ります。推しへの理解が深まる。
nekami:めっちゃニコニコしてるじゃないですか(笑)。
芥:私にとっての推しは、美しいダンスに「わーすごい!」ってなったり、切り取られた生活の一部を見て「あーかわいい」ってなったりするだけで満足な対象なんですよね。
nakami:そこに自分が登場しなくてもいいんですよね。
編集:わかりました。そこまで線が引けるなら芥さんはリアコではないと認めましょう…! え、でも本当に付き合いたいと思わないですか…?
芥:うーん、付き合えるなら付き合いたいけど…たぶん付き合っても今みたいな幸せな気分にはなれないんだろうなって思います。相手だって生身の人間だから嫌な面だって見えてくるわけで。そこをゴールとして目指したいかと言われると…。
nakami:なるほど。恋愛の大変なところはいらないけど、ときめきは補給したい。だからみんな推し活をするのかな? 見なくていいところは見なければいいわけですし。
編集:まさにいいとこ取り! ちなみにロンロンってリアルでは恋愛してないんですか?
nakami:考えたことなかった! いや、ないですね。男の人に興味ないし、同窓会にも絶対顔出さない。人付き合いもそんなに得意じゃなくて、仲のいい友だちもワラちゃんしかいないですし。


『ロンロン、沼を知る』378話

芥:でも今はたくさんのオタ友が!
nakami:そうなんです。例に漏れず、今は恋愛以外に楽しいことが多すぎて、わざわざリアルで恋愛をする必要がなくなってしまったのではと。
芥:女性向けマンガを描いていると、どうしても恋愛軸を求められがちで。でも今って恋愛してない人も多いじゃないですか。「恋愛って、現代人にそこまで需要あるのかな…?」って、なんとなく矛盾を感じていたんですが…。
編集:人はずっと恋愛で得られる快楽を求めてはいるけど、恋愛コンテンツの代替消費で満たされているから、リアルでは恋愛を欲さなくなっているってこと? パラドックスってやつなんじゃないですか!?

「人生のための仕事」――アイドルとマンガ家、それぞれの働き方

芥:そういえば、ロンロンって毎日更新されてるんですよね?  切れ目なくあの密度のものを月30ページってすごすぎます!
編集:本当に!そのプロ意識と根性たるやですよ。
nakami:毎日できたてほやほやをお届けしています! いや、でもプロに憧れてるだけですよ。珍獣しか描いてないですし。背景描くの嫌いですし。
編集:立派なプロですよ! というか、ロンロンたちって珍獣だったの…!? 
nakami:いち読者として少女マンガが大好きだったので、やっぱり少女マンガ家さんは神様みたいな存在です。まとまったストーリーを毎月描き上げるってすごいことだと思います。
編集:今は掲載媒体も多様ですし、連載間隔やボリュームも無理のない働き方をするのが健全と思っているのですが、それでもやっぱり「血を吐いてでも毎月原稿を上げる」みたいな人にアドバンテージがある部分も否定はできなくて。単行本が出るスパンも早いから忘れられないし、やっぱり有利ではあります。昼も夜もなく身を削りながらマンガと向き合うからこそ得られる人気もあるとは思うから。なんかアイドルと似ているなといつも思ってます。何の理由もなくカムバの間隔が開いたら「もっとやる気出して!」と思ってしまうだろうし。
nakami:「忘れられない」って大事なんですよね。アイドルでもたまに心身を壊してお休みをしちゃう子がいるじゃないですか。「ゆっくり休んでね」って、みんな優しい気持ちで送り出すんだけど、待ってる間に他のアイドルに心移りすることはどうしてもあって。でもそれはもう誰にも責められないですよね。
編集:そういうところはやっぱり「水商売」だなって思います。
芥:百歩譲ってマンガ家はアシスタントさんを増やしたりしてどうにか量産体制をとることも不可能ではないかもしれないですが、アイドルはその人自身が商品だから、難しいなと思います。本人が働く以外に供給の手立てがないから…。
編集:頭ではアイドルの労働環境がホワイトであれと願いながらも、供給が減ったりクオリティが落ちたりすると、心が冷めてしまう…難しいですね〜。
nakami:向こうもそれを分かってて、そうなりたくないから無理しちゃう。
編集:例えば現代で自分だけインターネット使えなかったらむしゃくしゃするじゃないですか。でも江戸時代にタイムスリップしちゃえば諦めがつくみたいな。 みんなで不便になろう、貧しくなろうという気概でみんなで「いっせーの」で降りてしまうんです。マンガ家さんやアイドルが一斉にホワイトな1日8時間労働になったらそれはそれでフェアだと思うんですけど。
nakami:確かに…でも…難しいでしょうね。抜け駆けしてなんぼの世界でしょうし。頑張りたい人がいたら、そこに合わせてくしかないのかも。
芥:みんながホワイトに働きたいわけじゃなくて、めちゃくちゃ働きたい人がいるから。マンガ家だって描きたくて描きたくてしょうがない人がいるんですよね。あとは単純に体力の問題。体力がある人はたくさん働けばいいし、体力のない人はないなりに幸せに生きられる働き方をすればいいんですよ。
nakami:ですよね。アイドルって見た目やセンスと同じくらい、体力という才能に恵まれてないとなれないかもしれないですね。
芥:アイドルの世界に留まり続けることが、その子の「人としての幸せ」ということでもないと思いますし。
編集:その感覚わかります! 編集者として、どうしても「マンガ家としてのベスト」を尽くしてほしいと思ってしまうし「マンガ家としての成功があなたの幸せ」ってポジショントークをしてしまいがちなんですが、結局は「仕事のための人生」じゃなくて「人生のための仕事」だから。
nakami:子どもが生まれたりして生活ペースが変われば、今まで通りに働けなくなるのは当然ですし。
編集:可能か不可能か以前に「どう生きたいか」もそれぞれ違って当然で、「仕事を第一にして」っていうのが作家さんにだけ適用されるっていうのも変な話ですもんね。
芥:私は家のことに重きをおきたいタイプなんですよね。子どもが生まれて2年くらい、本当に両立が大変だった時期に「なんで子どもが病気の時にそばにいてあげられないんだろう?」と考えてしまったんです。あと普通に体力がもたなかったんですけど(笑)。でもやっぱり一方で、すべてをなげうってでもマンガを描きたい人もいる。ベビーシッターさん雇って、お金で捻出した時間でまたマンガ描くってタイプの方もいらっしゃるから。生き方が全然違って、やっぱりそこでマンガ家としてのキャリアに差がつくのは当たり前だと思っています。ある意味フェアな世界ですよね。頑張った人がちゃんと報われる世界で良かったなって。
nakami:マンガ家もアイドルも誰に強制されるでもなく、自分が自分でいられる熱量で仕事に関わっていけるといいですよね。追求すべきは「仕事」の先にある「幸せ」なのかもしれないです。
編集:推しにも担当作家さんにも「自分の人生を豊かにするための仕事」をしてほしいなって思います! これからもよろしくお願いします!

ロイホで5時間に及んだ対談もこれにて終了です!
最後にnakami先生、芥先生にお互いのキャラを描いていただきました〜!



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nakami

子供の頃からキャラクターを描くのが好きでずっと描いていました。 ロンロンと同じく食べることが大好き。ロイヤルホストにいつでも行きたいです。
▼X(旧Twitter) @ronron_numa
▼Instagram @ronron2328/

芥文絵

2011年、「つぼみ」(芳文社)にて『私の愛する河野さん』でデビュー。「デザート」(講談社)の連載作『セキララにキス』(全9巻)で人気を博す。監修作に「マンガ家と作る背景イラスト集〈教室〉」(新書館)がある。現在は「FEEL YOUNG」(祥伝社)にてオタク会社員と隣人年下男子の交流を描いた『転がる女と恋の沼』を絶賛連載中。
▼X(旧Twitter) @akuta_fumie
▼Instagram @fumie_akuta