宇垣美里×一穂ミチ「マンガ大好き!!! なわたしたちの最新女性マンガ最速読書会」レポート②

この10月から紙単行本の創刊が始まったOUR FEEL COMICS。
「どんな作品があるの?」「どんなところが面白いの?」
作り手である作家や編集者も伝えたいことはたくさんありますが、読み手にとって信頼できるのは実際読んだ人の感想ですよね。
そこで、読者代表としてマンガ大好きなお二人をお迎えして、最速読書会を開催しました!
第2回では、10月刊行コミックスのお話を中心にお届けします。

※この記事では、2025年11月13日にYoutubeで公開された動画の模様を一部編集してお届けいたします。

 メンバー 

宇垣美里|フリーアナウンサー・俳優。1991年 兵庫県神戸市出身。2019年3月にTBSを退社し、現在はドラマ出演やラジオパーソナリティー、執筆業など幅広く活躍している。週刊文春、女子SPA!などで漫画や映画のコラムを連載中。
現在、テレビ東京で放送中の不妊症の主人公を描いた大人のラブストーリー、木ドラ24「できても、できなくても」にて民放初主演を務め、話題を呼んでいる。

一穂ミチ|小説家。2022年『スモールワールズ』で吉川英治文学新人賞、2024年『光のとこにいてね』で島清恋愛文学賞、『ツミデミック』で直木賞を受賞。BL漫画の原作担当作に『オンリー・トーク』(漫画・志村貴子)等。「好書好日」にて「一穂ミチの日々漫画」を連載中。

司会・神成明音|OUR FEEL 編集長。担当作に、『オレの妹に勝てる気がしねえ』、『たぶんここから始まる恋』、『君のクイズ』、『ねんねんころころ』、『女の園の星』、『脱落令嬢の結婚』、『発達障害なわたしたち』他多数。

 

読書会、楽しすぎ!

神成
私、今日正直すっごく楽しいです。嬉しすぎる。

宇垣
私もー! 人と感想を話すのがすごい好きで。

神成
皆同じ漫画を読んでここに集結してるんだということが本当に楽しくてしょうがないです。

宇垣
同じぐらい漫画を読んでる人ってあんまり出会わないですよね。アフター6ジャンクション2(TBSラジオ)というラジオをやっていて、「マンガ部」っていうのがあるんですけど、そこでも生き別れの兄弟に会ったみたいなテンションになります。「えっそれも読んでるんですか!?」「これも読んでます」「あれの話ですよね?」みたいに、全員が全力で会話できる

神成
すごいわかります。別々の場所に生きているんですけれども、やっぱり同じものを読んでいると、脳が似ているみたいな気持ちに…(笑)、僭越ながらならせていただきました。

宇垣
同じぐらいの熱量じゃなかったら、出力を下げて喋ったりするじゃないですか。全力で会話できることの楽しさを今、思い出してます。

神成
今日は振り切っていただいてますか!?

宇垣
全力ができる〜!みたいな。

神成
やったー! ぜひこのままハイペースで行きましょう! 本当にお二人の言語化能力が高すぎて眩しい。嬉しすぎます。

 

「オレの妹に勝てる気がしねえ」
 ためこう先生

あらすじ
23歳引きこもり無職の主人公が、親の再婚により義妹と同居開始。筋トレが趣味の義妹と仲良くなるため、主人公も筋トレの世界へ…。新感覚の筋トレ×ラブコメ漫画。

神成
では次は、ためこう先生の『オレの妹に勝てる気がしねえ』です。

一穂
打って変わってポップですね、これはね。表紙もかわいい。

神成
こちら、筋トレと恋愛をかけ合わせたラブコメ作品なんですけれども、お二人とも筋トレはなさってますか?

宇垣
私はめちゃくちゃ筋トレする人なので、すごくわかると思いながら読みました。ジムにはずっと通っていたんですけど、この4月ぐらいから結構本格的に通うようになって。人間って体力と気力だと思ってるんですけど、まず体力がないと気力が出ないんですよ。で、体力ギリギリのところの最後は気力なんですけど、結局その底上げに筋肉が必要なんですよ

神成
めっちゃ分かります。最後もう一歩を粘れるのって筋肉の力ですよね。体力がないと人間に優しくなれないし、お仕事もできないし。

宇垣
そうそう。筋トレって一つ一つは細かいし、そこまですごく大変とかではないじゃないですか。一歩一歩なんだけど、それを積み重ねた後の自分を褒めたくなったり、それが自己肯定感に繋がったりするのがすごいわかるんです。本当に些細なこと、たとえば体脂肪率の変化で「だから私は大丈夫」とか「めっちゃやるやん」とか、自分のことを肯定できる。

神成
一番いいエッセンスを全て拾ってくださっていてすごい! ありがとうございます。一穂さんはいかがですか?

一穂
私は平地を歩く以外の運動を全くしないんですけど、今日は1万歩歩いたなっていう日は自分を褒めます。家帰ってビール飲むかみたいな。

宇垣
でもそれが一番美味しいんですよね(笑)。

神成
平地を歩いてるだけで偉いです。本当に偉い。

一穂
ためこう先生の絵がめちゃめちゃ上手いので、筋肉のリアルさがすごくいいですよね

宇垣
何ならこうやってブルガリアンスクワットすればいいんだみたいな。

一穂
実践的!

神成
まさに実用書と言ってもいい。

宇垣
学びにもなるし、食事についてもすっごいわかる! 私いま、全ての食事の写真をトレーナーに送る生活をしていて自炊もするので、「わかるわかる、だんだん“素材”みたいな食事になってくるんだよね」、って共感。

神成
筋トレ初心者のお兄ちゃん・瀧くんが作った、刺身と納豆と味噌汁みたいな献立ですね。結局これが一番いいんだからってなりますよね。

一穂
50キロ以上の女子は存在しないと思ってる男性にもぜひ読んでいただきたいです。

神成
息を飲んでしまいました。全然存在してますが!?

一穂
詩ちゃんのこの筋肉美、素晴らしいですよね。こんな体憧れちゃうなって。

宇垣
その後、一回増量してっていうくだりがあるんですけど、それもめっちゃわかるんですよ。私も最初あんまり食べてなかったら、トレーナーさんに「食べないとずっと飢餓状態で痩せません」って言われて。ずっと低かったら下がらないんです。結構無理して食べてたら、逆に安定して下がるようになってきたので「わかる〜!」となりました。あと、ちょっとぷよってる自分も別に好きだし

神成
本当にそうなんですよ〜! この作品を読んで、「誰かのために美しくなろうとしてるんじゃない」っていうことを改めてすごく思い出したんですよね。

一穂
自分の体をどうポジティブに受け止めるかっていうことの指南書ですよね。ただ「筋トレをやりましょう」じゃなくて、どんなやり方でも負荷でもいいからと。私も瀧くんのタイプなんですよ。

神成
私もです。

一穂
今日も何もしていない…って。そのコンプレックスにコンプレックスが上書きされていって、どんどん「もうダメだ」と思うんですけど。詩ちゃんみたいにね、「ちょっとでいいんですよ」とか、「これができたじゃないですか」って言ってくれる存在がいるとそれだけで救われますよね。

神成
詩ちゃんが瀧くんにかけてくれる言葉って、読者にかけてくれてる言葉でもあると思います。「頑張ってみようと思えたことが大事なんですよ」とか「昨日よりも1ミリでも進んでたら大成功ですよ」とか金言がいっぱいある!

宇垣
染みるぜって感じですよね。でもそんな詩ちゃんが、男性の先輩にちょっと「クッ」とするようなことを言われる瞬間があるじゃないですか。

一穂
ありますね。

宇垣
あれの既視感がすごくて。きっと全女性の既視感ですよね、あれは。「言われたことある〜」みたいな。「もっと華奢なほうが」とかね。

神成
わかります。なぜ、人の体型に何か言えると思ったんですか? という怒りが…。

宇垣
私すっごいヒールが好きなんですけど、ヒールを履いていたら「もっと小柄な方がモテるのに」とか。「あなたにモテる必要なーい(笑)」みたいな。

神成
本当にそうですよ! 怒りが収まらない…。

宇垣
でもその「うっ」ていう気持ちと、でもやっぱ怖いっていう気持ちもあって。

一穂
そうなんですよね。筋トレしたから、物理で男性をボコボコにできるわけでは決してないっていう現実もちゃんと描かれてるんですよね。そこもすごいリアルだと思います。

宇垣
どんなに強くなってもやっぱり怖いし。でも、「でも!!」っていう。詩ちゃんの筋トレの最初のきっかけが、ベントレー持ち上げるっていう…あれも私、めちゃくちゃわかって。

神成
そうなんですか!? 嬉しいな。

宇垣
私も最初「物理で強くなりてぇ」と思ったんですよね、やっぱり。それこそ、ぶつかりおじさんにバーンってされた時に体幹で勝ちたい

神成
バーンって跳ね返したいですよね。負けねえぞっていう。

宇垣
あと、私のすごく好きなところが…。
最初に読み始めた時にはちょっと不安があったんですよ。親の再婚によって家族として一緒に住むようになったところで、もし彼女の何気ない行動を搾取されたら嫌だな、っていう目線があって。「一緒に住み始めたから急に好きになるとかあったらちょっと嫌かも」と思いながら読んでいたんです。でも、それが本当になくて。

神成
そうなんです。宇垣様、気づいてくださってありがとうございます。よくぞ気づいてくださって。

宇垣
(一穂さんに向かって)思いませんでしたか?

一穂
思いました!

神成
実は本当にこれ、『俺の妹に勝てる気がしねえ』っていうタイトル自体も、「妹になったからってあなたのことを好きになるとは限らないです」っていうところがありまして。

一穂
本来当たり前なんですよね!

神成
そうなんです。そして一緒に住んだからとて、ラッキースケベ的なことを絶対に生まないぞっていうのがありました。

宇垣
確かに、なかった…!

神成
あと、瀧くんに優しくするのも、実は詩ちゃんには理由があるっていうところもためこうさんに丁寧に描いていただきました。そこを見つけてくださってありがとうございます。

宇垣
いわゆる夢みたいな妹像ではない。それがすごくいいなと思いました。この設定だとそういうものってたくさんあるじゃないですか。

神成
あります。それはそれで、それを夢として求める方には届くと思うんですけれども、私たちが必要な物語ではないんですよね。

宇垣
そう、どうしてもその妹の方に感情移入しちゃって。私は「なんで?」って思っちゃうんですけど、この作品には本当にそれがなくて。途中からは全然力を抜いて、「信頼〜!」と思いながら読めるようになりました。

一穂
皆さん、警戒心を解いてね。

神成
お二人のお墨付きをいただいてよかったです。ありがとうございます。

宇垣
主人公の瀧くんにとっても、別に恋で報われなくても、あなたには筋トレがあるじゃないって。

神成
その通りなんです! 「人生は続くから」ということがこの作品のテーマの一つでもあるなと思っていて。恋愛のために一瞬筋トレを頑張れて、一瞬綺麗な体になったとしても、恋と一緒に終わっちゃうならもったいない。逆に頑張れない時があったとしても、頑張った経験があるから、また全然やり直せるよっていうことを伝えていけたらなって思っていました。

『オレの妹に勝てる気がしねえ』1話はこちらから!
ourfeel.jp

「たぶんここから始まる恋」
 ねむようこ先生

あらすじ
TVドラマ化した『こっち向いてよ向井くん』の著者による最新作。
塾講師の主人公と、生徒の保護者。大人同士の不慣れな恋を描く。

神成
次はねむようこ先生の『たぶんここから始まる恋』です。

宇垣
これもまた…! まだ5話ぐらいですかね。ここからですね〜!

一穂
まだ始まってないんですよね。

神成
まだ「ここから始まっていない恋」でした、1巻は。

一穂
表紙もロマンチックでめちゃめちゃ美しい。ねむ先生の一重と二重のまぶたをちゃんと描き分けるところがすごくいいんですよね。ちょっと塩顔男子じゃないですか、今回。

宇垣
色っぽいですよね。

一穂
色気がすごいですよね、ねむ先生の絵は。

神成
前作が『こっち向いてよ向井くん』(祥伝社)という作品で。

宇垣
あれも本当に「なるほど」って思いながら読んでいました! 

神成
まさに、『向井くん』では恋愛の「こういうところあるよな」を解像度高く描いてくださってたんですけど、今回はもっと気軽に読めるラブコメをやりたいと、ねむさんが仰って。でもこれはこれでまた、大人のしっとりした恋愛になったなと思ってます。

一穂:ですよね。大人の恋愛ってお洒落なバーに行くことではなくて。主人公の遼介くんが塾講師としての一線をちゃんとずっと真面目に引くところとか、そのお相手の奈々美ちゃんもシングルマザーなんでね。

一穂
「娘の道ちゃんがまず第一」なのはもう絶対に揺らがないっていう、その大人感ですよね。

神成
そうなんです。まさに恋愛によって全てを投げ出すようなことはできないっていうのが本当に大人のあり方だなって思っていて。

宇垣
社会生活をしていますからね。

一穂
あと“連れ子もの”にある「子供がすごい懐いちゃったから」みたいなのって、うーん…って思う時、私あるんですよね、正直。現実にそういうことも全然あるかと思うんですが。

神成
わかります。

一穂
「意思決定はその子なの? じゃあ責任もその子になっちゃわない?」みたいなところがあるので。そういう意味では、道ちゃんが中二らしいくそ生意気さで、めっちゃいいクソガキなんですよね(笑)。

宇垣
でも「いるいるー!」みたいな(笑)。

神成
全然類型的ないい子で扱いやすいっていう感じではなくて、「子供にこういう苦労させられるね」っていうことがいっぱい詰まってますよね。

宇垣
かつての私、みたいな気持ち。

神成
あれ…?(笑)愛すべきクソガキだったということですか。

一穂
でもきっと、親はこうやって向き合ってくれてたなって、感謝を抱いてしまったりするとこもあり。

宇垣
「小生意気な…」と思いながら相手してくれたんだろうなぁって(笑)。
あとやっぱり大人だから、それぞれに抱えているここまでの人生がゆえの悲しみとかトラウマとかが、(恋が)始まる前に結構しっかり描かれているじゃないですか。それも奥行きというか「それぞれに生きてきたんだな」という実感が溜まってくる。

一穂
大人なので、それに振り回されたりはしない。けれども根っこのところにある寂しさとか悲しみっていうのを、これからお互いがどう温め合っていくのかいかないのか!どうなんですか?

宇垣
ねー! 

一穂
遼介は一応彼女いますよね、れなちゃん。いいキャラ。

神成
れなちゃん尖ってますよね。れなちゃんの存在もそんなに大きくする予定ではなかったんですけど、キャラが良すぎて、まだいるなこの人は…っていう感じで。

宇垣
確かに〜! 爆発力ありますね、近くにいたら大変だけど。

神成
他の人が大人な分、近くにいたら大変だなっていう人の輝きが増すんですよね。

一穂
衝動的なね。この子はこの子で、いるよねっていう。

宇垣
生きてるって感じがしますよね。遼介の、トラウマから何を選ぶかっていうところが気になります。自分の中のトラウマの対処の仕方ってあるよなと思いました。傷つきたくないから傷つきそうな方を選ぶ。

神成
そう、その通りです。

宇垣
ありますよね。そうなった後、「やっぱりね」って笑うめっちゃ傷ついてるんですけどね、それで。

一穂
大人も「全部知ってた」って言いたいので。

神成
100%期待してそれが裏切られたら、もう立ち直れないんじゃないかっていう怖さがありますもんね。「分かってたので傷は浅いです。大丈夫」って言いたい。

宇垣
全然傷深いし、全然嫌なんですけどね。

一穂
大人で他にやることもたくさんあるので、そのような傷にいちいち構ってらんないみたいな忙しさもあったりね。あと塾の同僚の先生いるじゃないですか。あいつヤバくないですか? 沼じゃないですか。

神成
気づいてくださいました? 磯崎先生のことを。

一穂
お前の恋バナもちょっと聞かせろや。

神成
めっちゃ嬉しい!!!(笑)

一穂
遼介とはまた対照的で、こなれた感じの人。サバけてて、先生としても遼介よりは手慣れてて、生徒あしらいもうまい。

宇垣
ね、もうちょっと器用なのかもしれない。「はいはい、カカシカカシ〜」っていう。確かに、あそこの同僚感もいいですね。

一穂
これからいろんな人間関係が気になりますよね。「早く進行してくれ!」って思いながら、「でもそうもいかないんだよな。知ってる、知ってる」みたいな。

神成
大人だからー!

一穂
そう!大人だからー!

神成
この二人は塾講師と保護者という立場ですが、背中を押せる二人でしたか?

一穂
「(彼らが)行かないからこそ押せる」っていう矛盾した感情が生まれるんですけど。

宇垣
確かに! 行ったら「責任感無(な)!」って思うけど、それがないからこそ「くぅ〜〜!」みたいな。

神成
確かに、こちらも押し切れはしないんだけれども…。

一穂
「あなた方お似合いなんですよ」っていう。

宇垣
そうそうそう、「もう行っちゃえばいいのに」って外様として言えちゃう

一穂
奈々美ちゃんが七つ年上なんで、多分その辺のことも今後は色々と…。

宇垣
また、その大人のグッて我慢する感じと、ねむ先生のちょっと切なげな絵がめちゃくちゃマッチしてますよね。

一穂
遼介の小さい頃の写真を見た奈々美ちゃんに、「変わってないですね」って言われて、遼介がドキッとしたところがいいですよね。小技がいいんですよね、ねむ先生の恋愛マンガって

神成
すごいわかります。"本当の恋愛"を描いてくださってるみたいな気持ちになります。

一穂
そう! くすぐられるんですよ〜。

宇垣
リアリティーがすごい。これはもう続きが「待てない!」っていう感じです。

神成
ありがとうございます!

『たぶんここから始まる恋』1話はこちらから!
ourfeel.jp

第2回更新はここまで!
第3回の更新は11月15日(土)正午予定です。
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